きみがため
「できた……」

気づけば、隣の部屋から響いていた光の声が止んでいた。

時計を見ると、もう深夜0時だ。きっと、寝てしまったのだろう。

ようやく書けた初エッセイは、原稿用紙五枚ほどだった。

お父さんとの思い出、そしてお父さんを亡くした日の想いが、つらつらと、心のままに書き連ねてある。

明日、文芸部で、皆に見せよう。

川島部長は、なんて言うだろう。

桜人に見られるのは――少し照れくさい。
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