一生ものの恋をあなたと
高校3年。

指定校推薦が決まった次の週、俺達は11月ミサで出会った。

愛に話しかけられた時の衝撃は今もリアルに残っている。

薄暗い大聖堂の廊下。
俺は、誰もいなくなった頃に裏口から抜け出す予定だった。
そろそろ出ようとした時、長い髪を乱して走ってきた女が、裏口から入って来た。

まずい!
と思って、とっさに身を隠そうとしたが、すぐに見つかってしまう。
その女が声をかけてきた。

まさに抜け出そうとしていた俺には、鬱陶しさしかなかった。
だから、つい、いつもなら絶対に言わない様な
悪態をついてしまった。

けど、彼女は言った。

「…たしかに。
ミサに出ることを強要するのは間違っています。強要されて出るものではありません。
この学園がカトリックミッションスクールだとしても、誰にでも等しく宗教の自由はあります。
マリア様もイエス様も、そして先生方も、強要されることはないでしょう。

…でも。少しだけ、他者の文化を受け入れることは出来ませんか?
あなたの価値観も、他者の価値観も、お互いに認め合うことが出来れば、争いはなくなります。
強要されている…と、取るのではなく、他文化を受け入れる、と考えてみてはどうでしょうか。」

7年経った今でも、そのままの言葉で覚えている。
凛とした迷いのない声だった。

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