(仮)今日も推しの幸せを。
「飛鷹君、この子ね、総務の森本さん。うちは経理も総務も全部ひとまとめだから、領収書とか備品とか保険の手続きなんかも彼女にね。君以外で唯一の20代だから。あれ、森本さんいくつだっけ?あ、しまった、これセクハラか」
「いえ、構いません。私もう28ですよ」
「そっか、大人になったねえ。でもまだまだ若いじゃない。飛鷹君はいくつだっけ?」
「25です」
「あーそうだったそうだった。じゃあ平成生まれだね」
「はい。平成6年です」
知ってますとも。
平成6年5月24日生まれ。O型。東京都出身。
彼の誕生日に何度私がケーキを食した事か。
「まあとりあえず、年も近いし何かと聞きやすいでしょ。森本さん、会社の規定とか設備とか教えてあげてね」
「はい。森本さん、よろしくお願いします」
「は、い。よろしくお願いします…」
この感情をどうすればいいのか、とりあえず綺麗にお辞儀をする彼のつむじをじっと見つめた。
飛鷹真澄 1994年5月24日生まれ。
血液型、O型。
出身地、東京都。
家族構成は父、母、弟、弟。
好きな食べ物、肉と甘い梅干し。
嫌いな食べ物、酸っぱい梅干し。
特技、耳を動かす事。
座右の銘、働かざる者食うべからず。
某有名アイドル事務所の公式プロフィールを何度見た事か。
こんな基礎中の基礎を忘れるわけがない。
「ここが給湯室になります。給茶器は自由に使って大丈夫です。冷蔵庫を使用する場合は必ず記名して下さい」
どうしよう。
どうしようどうしよう、ずっとファンでしたって言うべき?
これからもずっと応援してます、って言いたい。握手して欲しい。
でもそれキモくない?
今はもう一般人として生活してるわけだし、これから同僚として仕事していくわけだし、気まずくならない?変な気使わせる事になるよね。それってキモくない?(2回目)
平静を保ち淡々と給湯室の説明をしつつ、脳内ではそう言う結論に至った。
私はこれからも知らないフリをして、決して悟られないように影から(元)推しを支え応援し見守っていこう。