【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
だからって、別に、十歳も年下の若い女性と結婚した少々ロリコンの気がある兄さんとは違って。
当時高校生だった僕からしたら、当然、小学生だった彼女は恋愛対象外でしかなかった。
その証拠に、その記憶は胸の奥に大事に仕舞ってはいたけれど、また逢いたい、とまでは思ったことなどなかった。
よって、あの時大事なことに気づかせてくれた彼女に対して、ただただ純粋に、恩返しがしたい、そう思っただけのことで。
この時の僕には、神に誓って、いかがわしい邪《よこしま》な感情なんてなかった……筈だ。
とはいえ、まぁ、僕も男だし、その当時はともかくとして、大人になった現在の彼女は、あの気の強さといい、女性らしいメリハリのある抜群なスタイルといい、僕の理想とする女性の好みと一致していたし。
――これも何かの縁だし、もしこの再会に運命めいたものがあるのだとしたら、彼女さえ良ければ、それを一緒に確かめてみたい。
その頃の僕は、老舗料亭『橘』に涼と一緒に毎晩通い、高梨侑李の兄である侑磨さんとも親しくなっていたことも手伝って、当人である高梨侑李の気持ちなんて棚に上げて、そんなことを思っていたりもした。
なにより、幼稚舎に通う頃からの長い付き合いである、幼馴染の蔵本涼とは、老舗呉服屋の三男坊というよく似た境遇から、何かと気が合い、秘書まで勤めてもらっている、気心の知れた、僕にとっては唯一無二の親友でもあるこの涼とのやり取りの中から、
『もう、この際だから、店も彼女も全部、面倒見ちゃえばいいんじゃないか? 幸いなことに、兄の侑磨さんも、隼のこと気に入ってくれてるようだし。明日、借金のこと訊きだしたタイミングで、『実は妹の侑李さんのことを以前からお慕いしておりました』って伝えちゃえば、案外とんとん拍子にいくんじゃないか? 『妹に浮いた話がないから、嫁に行き遅れないか心配です』ってぼやいてたし』
『いや、だからって、そんなに上手くはいかないだろう?』
『いやいや、あの気のいい侑磨さんのことだから、隼お得意のニッコリ笑顔をお見舞いすれば、イチコロだって』
『そうかなぁ?』
ポロっと飛び出した言葉が、まさか、本当に実現してしまうなんて、思ってもみなかった。