【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 ――ウソでしょ!? 

 まさかこんなところで、自分の勤める会社の副社長の、《《あんな場面》》に居合わせてしまうなんて……。

 夢にも思わなかった私は、驚きすぎて、一瞬、その場で動きを止めてフリーズしてしまうという大失態を犯してしまったのだが……。

 意外にも副社長は、私のことに気づいてはいないのか、なんの反応も見せずに、先ほど女性が走り去っていったエレベーターのほうへと、何食わぬ顔でスタスタと歩みを進めたのだった。

 ――あれれ? 気づいてない?

 まぁ、普段はカッチリしたスーツ姿だし、今はホテルのメイドっぽい制服姿だし。

 なにより、こんなところに、まさか自分の会社の秘書が居るなんて、普通、思わないよね。

 ホッと胸を撫でおろしつつ……

 それにしても凄いもの見ちゃったなぁ。

 さっきは《《変態》》なんて言われてたけど、《《鬼畜》》っていうあの噂、本当なのかな? 

 それに、《《縁談》》がどうとかって言ってたけど、お見合い相手とホテルで婚前交渉してて、何かがあったっていうことだよね?

 ――無いわぁ……。

 そんなことを呑気に考えながら、私は軽い足取りでワゴンを押して歩いていたのだった。

 そして、それからの業務を粛々と熟《こな》していた私が、従業員に指示されて、溜まったゴミの分別をするために、裏路地に面したホテルの敷地まで、ゴミ袋をいくつか抱えて向かっていた時のことだった。
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