【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
しばし驚きすぎて呆然と突っ立ってることしかできないでいた私に向けて、
「これはこれは高梨さん、奇遇ですねぇ。たまたま通りかかって、暴漢かと思って助けに入ったのですが……。大丈夫でしたか? お怪我はございませんか?」
少し離れていたことろに立っていた副社長が、ゆっくりとこちらに歩みを進めながら、私のことを気遣うような言葉がかけられて。
そこでようやく、ハッとした私が顔を向けると。
頼りない照明に照らせれた甘いマスクの副社長の頬に視線がいき、紅くなったところがなんとも痛々しい。
"あの場面を"慌てて脳裏から追い出しつつ、
「……あっ、え、は、はい。……だ、大丈夫です。ありがとうございます」
なんとか声を返してはみたものの……。
やっぱりどうしても気にかかるのは、社内規定で禁止されている副業をしていることがバレてしまったことと。
"あんな場面"を見てしまったという後ろめたさから、まっすぐに副社長の目を見ることができない。
「いえいえ、ご無事でなによりです」
けれど、そう返事を返してきた副社長からは、特に気まずそうな様子も見受けられない。
もしかしたら、たった今、私と気づいただけで、さっきの場面に居合わせていたことには気づいていないのかもしれない。
まぁ、でも、今は余計なことを言わない方が賢明だ、とも思ったり……。
どっちにしても、副業はバレてしまったことには変わりないのだが。