【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 ――び、ビックリした。夏目さんか。もうビックリさせないでよ……。

 あれ? そういえば、こんな風に夏目さんが私に話しかけてくるようなことなんて、この秘書室で勤務するようになってから、ただの一度もなかったような気がするんだけど……。

 それに、なんだろう? 以前の夏目さんには、人を寄せ付けないダークな雰囲気が漂っていた筈なのに。ここ最近どことなくそのダークな雰囲気が和らいだというか、銀縁メガネの奥の鋭かった眼差しがちょっと緩んだような、そんな風に感じてしまうのは。

 ーーそれにしても、相変わらず銀縁メガネがよく似合ってるなぁ。

 銀縁メガネのお陰と、見目麗しいハイスペックな社長と一緒に居る所為で、社長にばかり注目が集まりがちだけど、元々顔だって整っているし。

 この顔でニッコリなんて微笑まれた日には、秘書室の皆イチコロだろう。

 私的にはもっと優しい気さくな雰囲気が欲しいところだけど……。

 こっそりとメガネフェチの私が呑気にそんなことを脳内で繰り広げていたところに、ふっとキラースマイルを満面に湛えたメガネ姿の鬼畜の顔が浮かんできてしまい。

 ――あーもー、どうしてイチイチ出てきちゃうかなぁ……。

 慌てて、ふるふると頭を振って追い出すと同時に、おそらく怪訝そうな表情で私のことを見下ろしているだろう夏目さんに向けて声を放った。

「……す、すみませんっ。すぐに終わらせます」
「いや、別に急いでないから構わない。少し確かめたいことがあっただけだ」
「……はぁ」

 ――確かめたいことってなんだろう?
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