【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
思い当たることがなくて、ますます首を傾げることしかできないでいる私との距離をいきなり詰めてきた夏目さん。
給湯室というそんなに広くない空間で、急に距離を詰められた私が状況が掴めずにいる間に、あたかも退路を断つようにして、すぐ横にある冷蔵庫へと私のことを追い込むように片手を突いた夏目さん。
私はあっという間に所謂壁ドンの体勢にされてしまっていて。
「……あのう、夏目さん? 急になんなんですか?」
「単刀直入に訊くが、高梨は副社長と本当に付き合っているのか?」
「――へ!?」
まさか、そんなことを訊くだけのためにわざわざこんなことをするなんて思ってもみなかったため、妙な声を出してしまったのだけれど。
「やっぱり、副社長になにか弱みでも握られているのか? それで恋人のフリをさせられてるとか。そうじゃないと木村のことを好きな高梨が副社長と付き合うなんておかしいからなぁ」
「――ええっ!? どっ……どうしてそんなこと知ってるんですかっ?」
「見ていれば分かる。まさか、隠せてると思っていたのか?」
「……いや、そうじゃないですけど」
――だって、『弱みでも握られているのか?』とか、『恋人のフリ』なんて言うから、そっちに驚いちゃっただけで。
……ていうか、木村君の名前が出たことにはびっくりしちゃったけど。名前を聞いても特に何も思わなかった自分自身に対して驚きを隠せないでいる。
そんな私のことを夏目さんが眉間に皺をいくつも浮かべた険しい表情で見下ろしてきて。
怖さよりも心の内を見透かされそうで、なんだか居心地が悪い。