【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
そこへ、さっき私が放った言葉の真意を問うように、少し苛立ったような夏目さんの低い声が聞こえてきて。
「で、どうなんだ?」
「確かに好きでしたけど、今はなんとも思ってません。今は……副社長とお付き合いしているので」
こうやって鬼畜のことを話しているだけだというのに、頬が熱くなってしまうのがメチャクチャ恥ずかしい。
かといって、自分の意思じゃどうにもならないからどうしようもないのだけれど。
「……そうか、分かった。どうやら私の思い過ごしだったようだな。でも、意外だった。まさか、高梨があの鬼畜と付き合うことになるなんてな。色々大変そうだが、まぁ頑張って。時間とらせて悪かった」
お陰で夏目さんには、鬼畜に弱みを握られていることも、恋人のフリをしていることもバレずには済んだようだった。
私の言葉に納得した様子の夏目さんは、さっさと冷蔵庫に張り付けていた私のことを開放すると、何事もなかったかのように、去り際に、「じゃぁ」と言い残し、給湯室から足早に出て行ってしまった。
――結局夏目さんの目的は何だったんだろう?
それに、どういう訳か、夏目さんからは、副社長である鬼畜に対して嫌悪のようなものがひしひしと伝わってくるような気がした。
もしかして、夏目さんは鬼畜のことを嫌ってるのかな?
もしくは、嫌うような何かがあったとか……。
夏目さんが居なくなった後も、静けさを取り戻した給湯室でカップに芳醇な香りと湯気を燻らせるコーヒーを注ぎながら、私の頭にはいくつもの疑問が飛び交っていたのだった。