【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 それはまだ見慣れているからいいとして。

 不意打ちで、ジャケットを脱いだノーカラーのダブルベスト姿という、大人のイロカが匂い立ってくるような鬼畜を前に、私は返事を返すのも忘れて見惚れてしまっていた。

 何故なら、先週知ったばかりの、鬼畜の何も身に纏っていない素肌の、しなやかな筋肉に覆われた精悍な体躯を思い出してしまったからだ。

 それらを鬼畜や蔵本に気取られないようにと、内心焦りまくりの私が、頭に浮かべてしまったそれらの映像をなんとか追い出そうと必死になっているところに、

「侑李さん? どうかされましたか?」
「……あっ……い、いえ、素敵なお店だなって思ってただけです」

再度鬼畜から声をかけられて、ようやく現実世界へと戻った私は、何でもない風を装って鬼畜に返事を返したのだが……。

「気に入ってもらえたようで安心しました。『橘』にお邪魔しても良かったんですが、侑磨さんの仕事の邪魔をしてはいけませんし。今日は以前から僕の行きつけだったこの店にお連れしたという訳です。
それに、諸々が解決するまではお互いのことを知るためにも、第三者を交えてこういう場を設けた方がいいと思ったのですが……。もしかして、僕とふたりきりになれると思っていたのに、蔵本君が居るからガッカリされましたか?」
「ーーはぁ!? だ、誰がガッカリなんかっ」
「そうですか、それはガッカリですねぇ」
「ふたりとも言ってることと表情が一致してないんだけど。ふたりっきりの時はそういうプレイでも愉しんでんのか?」
「たっ、愉しんでませんッ!」

 いつも無愛想で無口なはずの蔵本から、ここぞとばかりに放たれた意地の悪い言葉に、私は不覚にも動揺してしまっていた。
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