【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
そんなこともあって、とてもじゃないけど素面ではいられなくて、お酒を呑んでみたものの、結局酔えずじまいだった。
あれからも、同じような話題で盛り上がっては蔵本に面白おかしくツッコまれ、それを鬼畜にフォローされたりしながら美味しい懐石料理に舌鼓を打って、店を出たのは、時計の針が午後九時を少し回った頃だった。
来るときと同じように、店を出てから蔵本の運転する車の後部座席に鬼畜と隣り合って腰を落ち着けていた私が、車窓の流れいく煌びやかな街の景色をぼんやりと眺めていると、ふいに右肩に何かがぶつかるような衝撃が走って。
次の瞬間には、鬼畜の身体が私の右半身にしなだれかかってきたため、たちまち私の胸の鼓動がドクンと大きく跳ね上がった。
見れば、鬼畜はどうやら転寝してしまっているようで、うつらうつらと舟をこいでいるようだった。
ーーこのままじゃ心臓が持たない。
慌てた私がなんとか鬼畜の身体をどかそうとしているところへ、そのことに気づいたらしい運転席の蔵本に阻まれてしまい、泣く泣く従うしかなかった。
「ここのところ、ずっと『橘』で侑磨さんと一緒に戦略立てたりしててあまり眠れていないだろうから、ゆっくり寝かせてやってくれないか?」
「……え? あぁ……はい」
蔵本の言う通り、確かに最近は、鬼畜は連日のように終業後になると『橘』に出向いているらしく、兄と一緒に傾きかけている店を盛り立てるための様々な戦略を練っているようで。
けれども鬼畜に口止めされているらしく、兄もそのことは口にはしないが、ここのところ兄の帰りが日付をまたぐことも珍しくなかった。