【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 すると、まさか私が、そんな態度に出るとは思わなかったのだろう鬼畜は円らな瞳を少々苛立ったように眇めてから。

「……そうですか。いやぁ、残念です。あなたのような優秀な秘書を失うことになるなんて。まぁ、仕方ありませんねぇ」

 実に残念そうな表情で、大袈裟に嘆くようにして、独り言のようにそんな言葉を残すと。

「蔵本くん、失礼するとしましょう」

「承知いたしました」

「高梨さん、お仕事頑張ってください。それではこれで」

 思いのほかあっさりと、秘書の蔵本と一緒に、先ほど二人組の男が走り去っていった暗闇のかなへと消えいってしまった。


 その後、ホテルでの業務に戻った私の耳には、蔵本が呼んだはずの警察が来たというような話は聞こえてはこなかったのだが、返済のことで頭がいっぱいだった私は、当然のことながら、そんなことに気づきもしなかった。

 そんなことがあって、当然次の日には処分が下るだろうと思っていたのに、沙汰はなく。

 ――まぁ、そのうち、沙汰があるだろう……。

 そう思いつつ、借金返済のために、秘書の仕事とホテルでのアルバイトに明け暮れてるうちに、とうとう返済の日を迎えたのだった。
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