【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
「侑李、どうした? そんなとこで座ってないで、早く隼さんにお酌でもしたらどうだ?」
「……」
――誰がお酌なんかするもんですか。イーだ!
「いえいえ、お気遣いなく。仕事上がりで疲れていらっしゃるようですし。そっとしておいて差し上げましょう」
「いやぁ、本当に隼さんは、優しい方だ。侑李はいい職場に恵まれたもんだなぁ。いやぁ、本当に良かった良かった。ささ、隼さん、どんどん食べてください」
「ありがとうございます。それでは遠慮なく。
いやぁ、どの料理も美味しいですが、この筍の炊き込みご飯は絶品ですねぇ。いい具合に出汁がきいてて実に美味しいです」
「分かりますか? それは、千葉から取り寄せた”あご”(トビウオ)の出汁を使ってるんです」
「そうですか。実に上品なお味です」
「そうでしょう」
ハハハッ、てな具合に……。
見慣れた我が家の居間で、板前である兄が腕に縒《よ》りを掛けて作ったのだろう料理の数々が、ずらっと並んでいる平机を囲って。
和気藹々と実に楽しそうに、話に花を咲かせている三十路の二人の男の呑気な声と、その傍らで静かに箸を進める男の姿を尻目に。
心の中で毒づくのもバカバカしくなってきた私は、居間の端っこで、自分のこれからの行く末を嘆いていた。
こうして私は、とんでもない《《鬼畜》》に、目をつけらた挙句、《《弱味》》どころか、大きな《《借り》》まで作ってしまったのだった。