【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
それでも、負けてられるかと、
「誤解も何も、そんな副社長の我儘を聞けるわけないじゃないですかっ!」
鬼畜に対抗すべく、さっきよりも強い口調で放った私の言葉は、
「だから、それを誤解だと言っているのです。この件は、僕が副社長に就任する前から、話が出ていましてね。というのも、社長である兄が、副社長を務めていた時にもそうでしたが、仕事量がことのほか膨大でしてね。
蔵本くんが頑張ってくれてはいるのですが、あの有能な夏目さんでさえも第二秘書のサポートが必要だったのですからねぇ。
三上室長にも相談しましたところ、高梨さんが適任だと言われてましてね。つい先日、正式に決定したことなのです」
「そんなこと、一言も聞いてませんけどっ!」
「三上室長には、折を見て、高梨さんには、僕から話すと伝えてありましたからねぇ。まぁ、タイミングが重なってしまい、誤解なさるのも無理はないですが。どうぞ、誤解のないよう、よろしくお願いいたします」
「……」
実に、見事なまでに、なんともあっさりと、赤子の手をひねるようにして、簡単にねじ伏せられてしまった私は、まさに、ぐうの音も出せなかった。
「なお、お手持ちの業務に関しましては、三上室長よりお話があると思いますので。そちらが済み次第、これからのことは、この、第一秘書である、蔵本くんにお聞きください」
「……承知いたしました」
三上室長が決めたことなら仕方がないと、自分に言い聞かせながら、私は、これからは、《《上司》》であり《《雇用主》》でもあるこの《《鬼畜》》に、深々と一礼してから秘書室へと戻った。
私が居なくなった後で、口角を片方だけ吊り上げた鬼畜が、ニヤリとした表情を浮かべていたなんて、私には知る由《よし》もなかった。