【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 ようやく落ち着きを取り戻したはいいが、まだ呆然としてしまっている私のことをつい今しがた腕から開放してくれた隼。

 隼は、ソファに組み敷いた私のことを優しい眼差しで見下ろしつつ、かいがいしく涙をそうっと優しく指で拭ってくれている。

 その綺麗な濃いブラウンの瞳には、一切の翳りもなく、嘘をついているようには見受けられない。

 それでも、頭が冷静になればなるほど、櫻井さんのことがどうしても気にかかってしまう。

 だって、櫻井さんの豊かな胸といい、気の強そうな性格といい、隼の好みど真ん中なんだもん。

 だからって別に隼のことを疑っている訳じゃない。

 でも、どうしても不安になってしまうのだ。

 私の中で、隼のことを想う気持ちが大きくなりすぎて、隼のことを失うことが怖くて堪らないんだもん。

「……本当に?」

 不安を拭い切れずにいる私の、思わず口をついて出てしまった問いかけにも。

「ええ、本当です。侑李さんに僕以外の男が触れたのが許せなくて、その怒りを侑李さんにぶつけてしまいそうで、触れられなかっただけなんです」

 間髪入れず、即座に返してくれた隼の言葉に、やっぱり誤解だったんだとホッとすると同時に、隼も結城君のことで、嫌な思いをさせてしまったんだろうことも窺えた。
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