【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
今まで、何か用がある時には決まって、専属秘書である蔵本を介して三上室長に伝えられ、三上室長のほうから副社長室へ出向いていた筈なんだけど……。
わざわざ副社長自らが秘書室に出向いてくるなんて、一体どういう風の吹き回しだろう。
若干、悪い予感を感じつつ、私がそんなことを思って首を傾げている間にも、鬼畜は、
「いやぁ、皆さん、お疲れ様です」
秘書室の面々に、なんとも爽やかに労いの声をかけつつ、甘いマスクを最大限に活かした、あの、人好きのするニッコリ笑顔を振り撒いている。
秘書室の私を除いて、女性陣の心と視線を一心に惹きつけ、皆の眼をハートマークに変えてしまっていて。
これまた、どういう訳か、部屋の奥にある私のデスクに向かって、ゆっくりゆっくりと、まるで焦らすかのようにして歩み寄ってくる。
――お願い。どうか、私の悪い予感が当たりませんように……。
そんな私の願いも虚しく、私のすぐ傍まで歩み寄ってきた鬼畜は、椅子に掛けたままで呆気にとられ、ポカンとしてしまっている私の手をとって。
あろうことか、私の足元で、当然の如く、片膝をたて、跪《ひざまず》いてしまった。
そして、自身の眼前で、まるで祈りでも捧げるような格好で、私の手をぎゅっと両手で力強く包み込んできたのだった。