【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
それだけでも、驚きだというのに……。
「いやぁ、高梨さん。今日一日、あなたの仕事ぶりを拝見しましたが、あなたの仕事に向ける情熱には感銘いたしました。書類ひとつにおきましても、実に丁寧に、分かり易くまとめられていましたし。指示されなくとも、関連資料もいくつか添付されていましたから、仕事がスムーズに捗《はかど》りました。
いやぁ、さすが、三上室長が推薦するだけのことはありますね。蔵本くんも感心していましてね。ねぇ? 蔵本くん」
「はい。以前から優秀だとは思っておりましたが、これほどだったとは驚きました。高梨さんがサポートしてくれれば、鬼に金棒です」
背筋が、ゾクゾクッとするくらいの甘い声で、”至って普通の仕事しかしていない”私のことを大袈裟なくらいに、褒めちぎってきた。
いつもは、不愛想なくらい無口で、人に関心なんてなさげな、蔵本までをも巻き込んで。
けれど、鬼畜の言葉に便乗して、調子のいいことを言ってきた蔵本は、いつになく饒舌で。鬼畜に無理矢理言わされているようには見受けられない。
蔵本とは、あまり話したことがないからよくは分からないけれど、鬼畜とは学生の頃からの長い付き合いらしいし。
――もしかしたら、同類なのかもしれない。気を付けないと。
頭の片隅で、そう自分に言い聞かせていた私の耳に、先輩方の黄色い悲鳴が届き。
そこで初めて、痛いくらいの視線を浴びていることに気づくに至った私が、恐る恐る辺りに視線を巡らせば……。
仕事終わりで、ほっと一息ついていた筈の秘書室は、すっかり色めき立ってしまっている。