【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 ……今すぐ結婚したいなんて言ったつもりじゃなかったんだけどなぁ。 

 でも、ようやく隼の気持ちが上向いてきたっていうのに、ここでそんなこと言ったら、元の木阿弥になりそうだし。

 ーーさて、どうしたものか……。

 考えあぐねているところに、隼の顔が息のかかるほどの至近距離に迫ってきて、

「……あ、いや……その」

としか返せない私は説明しなくとも、しどろもどろだ。

 私との距離を保ったまま僅かに首を傾げた隼は、綺麗なブラウンの円な瞳をウルウルさせつつ、

「やっぱり、勢いで言っただけだったんですか?」

不安気な表情で切な気な声音を震わせてそう問いかけてきて。今にも泣き出しそうだ。

 私が啖呵を切った直後と全く同じ表情をした隼の姿を前に、時間が巻き戻ったのかと錯覚しそうになる。

 あの時、たちまち胸をぎゅうぎゅうとこれでもかと締め付けられてしまった私は、隼と同じ想いでいると伝えたけれど。

 現実問題、仕事のことだってあるから、すぐには無理だろうと思っていたし。隼にしたって、すぐにそんな気持ちにはなれないだろうと思ってもいた。

 ましてや、付き合ってまだ二ヶ月ちょっとなんだから、いつか仲の良かった両親のようになれたらいいなぁ。なんて、漠然と隼との未来を思い描いていただけだったから、今すぐ結婚と言われてもピンとこない。

 そういうことをちゃんと伝えれば、隼もきっと理解してくれるはずだ。そう結論づけた私は、包み隠さず話すことにしたのだった。

「ううん、違う。勢いなんかじゃない。付き合ってまだ二ヶ月ちょっとだから、心の準備ができてないだけで。結婚するなら隼しかいないって思ってる。けど、仕事のこともあるし、今すぐにっていうのは無理なんじゃないかなぁ」

「そうですね。じゃぁ、とりあえず、僕の家族に会って、婚約だけでもしてくれませんか?」

 ところが、意外にも結婚する気満々らしい隼から、婚約を迫られることとなってしまったから驚きだ。

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