【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
時間にすれば、きっと数秒のことだったと思う。
眼前の隼から、「侑李さん?」と呼びかけられて、頭が動き始め、隼の言葉が頭の中でリフレインする。
「ーーえッ? ちょっと待って。こ、”婚約”って、あの……”婚約”……のこと……だよね?」
結局、私の口から出てきたのはそんなお粗末なモノだった。
案の定、眼前の隼は怪訝そうな表情になってしまっている。
「それ以外に”婚約”なんて言葉、他にはないでしょう? やっぱり、気乗りしないからそんなふうに惚けてるんですか?」
そう返してきた隼の口ぶりも表情も、いまや不機嫌極まりないって感じになってしまっている。
とりあえず、隼の言うような意図がないってことを伝えよう、と放ったところ。
「ち、違う。惚けてなんかない。ただ、ちょっとびっくりしちゃって。だってまだ付き合って二ヶ月ちょっとだし」
なんだ、そういうことですか。と腑に落ちた様子の隼が呟いたかと思えば。今度は真剣な面持ちで静かに語り始めた。