【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
今なんて、ただでさえ甘いマスクをしているというのに、円らな瞳をうるうるさせて、捨てられたワンコみたいにシュンとした表情で、『お気に召しませんでしたか?』なんて、言ってこられると。
なんだか、こっちが悪いことをしているような、そんな錯覚に陥りそうになってしまった。
おまけに、さっきまで”高梨さん”呼びだったクセに、急に”侑李さん”なんて呼び始めるし、”初めてのデートとか言ってくるし……。
――一体何なの? どういうつもりよ? 絶対に、何か魂胆があるに違いない。
「あぁ、良かったです。侑李さんにお気に召していただけて、光栄です」
「ちょっとっ! 今、手の甲にキスなんてする必要なんてないじゃないですかっ!」
「いやぁ、これは失礼いたしました。お美しい綺麗な手がすぐ傍にございましたので、つい。まぁ、良いではありませんか。これからは、”秘書室公認の恋人”になるのですから。予行演習だと思ってお許しください」
――何が予行演習よ。まったく、油断も隙もあったもんじゃないっ!
数秒前まで、鬼畜の魂胆にばかり、気を取られてしまってた私は、本日二回目の不意打ちの”手の甲キッス”に、根こそぎ全神経を持っていかれてしまい、そんなことなど、もうすっかし忘れてしまってて。
いつのまにやら車から降りて、外からドアを開けて、私のことをエスコートし始めた鬼畜に、鼻息荒く、ツーンとした冷たい態度で振舞いつつ、見慣れた、しっぽりと和風の趣ある門構えを眺めつつ、玉砂利の敷き詰められた店先へと足を進ませたのだった。