【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 驚きすぎて動けないでいると、

「分かって頂けましたか?」

さっきまでとは打って変わって、余裕を取り戻したらしい、いつもの甘やかな隼の声音が降ってきて。

「そんなこと誰にも言われたことない。どうしてそんなこというの? せっかく泣き止んでたのに、感極まってまた泣いちゃうでしょ? 自慢じゃないけど、隼のこと好きになるまで、家族以外の前で泣いたことなんてなかったんだからっ」

 そんな風に想ってもらえてたことが嬉しすぎて、どう返していいか分からず、恨み言を言う私の言葉に一瞬ピタリと動きを止めた隼。けれどすぐに。

「ということは、家族の次くらいには、心を許してくれるって、思ってもいいんですよね?」

 さっきまでの余裕なんてすっかりなくして、そんな分かりきったことを自信なさげに訊き返してきた隼の、その落差に。

 こんなに右往左往するくらい、私のことで必死になってくれてるんだと思ったら、また嬉しくて、胸と目頭が熱くなってくる。

「もう、家族なんてとっくに超えちゃってるわよ」

「そう言ってもらえると凄く嬉しいです。それに、侑李さんに初めて出逢った時にも泣いてましたし。その時のことを思い出して、なんだかひどく懐かしいです」

「……え? ウソ。私、その時も泣いてたの?」

「ウソなんかつきませんよ。あの時は確か、『お兄ちゃんかと思って』とか言ってたような気がするんで、きっと侑磨さんと間違えたんでしょうねぇ。お陰で、侑李さんと出逢えたので、僕としては良かったですが。まぁ、でも、侑李さんは直後にお母様に叱られてたので、良い思い出ではなかったんでしょうねぇ。僕としては残念ですが」

「ねぇ、隼。初恋は実らないって言うのは迷信だよね?」

「……へ!? 急にどうしたんですか?」

「隼、私と出逢った時、今みたいにハンカチで涙拭ってくれようとして、私にハンカチごと叩かれたんじゃないの?」

 確か、夢の中で、見上げたら、キラキラ眩い笑顔の綺麗な男の子が至近距離に居て、私はビックリして少しでも距離をとろうと必死でその男の子のことハンカチごと振り払って、そこで目が覚めてたような記憶が微かに残っていて。

 ーーあれは隼に出逢った時のことだったんじゃないのかな。
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