【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 大広間を後にした私は、いつものごとく王子様然とした隼にエスコートされて、神宮寺家の綺麗に磨き上げられた廊下を歩いている。

 隼の様子が気になって時折顔色を窺ってみても。いつも通りで、何ら変わらないように見える。

 でも、なんだろう。隼のあんな表情を見てしまったせいか、さっきから妙な胸騒ぎがしてちっとも落ち着かない。

 お陰で、離れまであと数メートルというところで、隼に不意打ちで顔を覗き込むようにして。

「侑李、どうかしましたか?」

 優しい甘やかな声音で問いかけられてしまうこととなった。

 驚いて肩を跳ね上げるという、なんとも分かりやす過ぎるリアクションまで披露してしまっていた。

 ……が、それだけじゃない。

 この一週間で、セックスの時だけだった呼び捨ての『侑李』呼びも、ふたりきり限定ですっかり定着しつつあるけれど、まだ慣れないでいる。

 そのせいで、私の心臓は口から飛び出すんじゃないかと心配なほどだ。

「……え!? ううん。どうもしないけど、どうして?」

 何でもない風に装ったつもりだけど、絶対に装えていなかったに違いない。

 案の定、隼の歩みがピタリと止まって、甘いマスクも怪訝そうな表情になってしまっている。
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