【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
その人物とは、同じ秘書室の同僚であり先輩である夏目さんのことだ。
普段の口調とあまりにもかけ離れていたために吃驚してしまっただけで、別にもったいぶったわけじゃない。
隼のお兄さんの秘書であり友人でもあるそうなので、ここに居ても不思議じゃない。
それに加えて、隼に対する嫌悪感丸出しの物言い。
情報量があまりにも少ないからなんとも言えないが、どうやら兄弟間のわだかまりではないようだ。
初めこそ驚いてしまったものの、隼に嫌悪を抱く理由の方が気になった私は、いつしかあれこれ思案を巡らすことに夢中になっていた。
そんな私の耳元で、
「侑李、心配はいりません。すぐに終わりますから、少しだけ待っていてください」
私のことを気遣って、いつもの甘やかな声音で囁いてきた隼。
けれど私の返事を聞かないうちに、すぐに隼の背後に立っている夏目さんの方にクルリと向き直った隼が声を放っていて。
「夏目さんこそ、そんなところで立ち聞きなんて趣味が悪いじゃありませんか」
隼のその様子からも、余程の事があったのか、と邪推してしまう。
それに対して間髪入れずに、「フンッ」と鼻を鳴らした夏目さんは、忌々しげに隼のことを見据えてきた。
今にも隼の胸倉でも掴みかかってきそうな、一触即発の雰囲気が夏目さんからヒシヒシと伝わってくる。