【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 私の言葉に驚いたような顔をして瞠目するかと思っていたのが、当てが外れて。

 すぐにニンマリとした表情になって、えらく感心したように、

「あーぁ、もうすっかり骨抜きにされちゃって。高梨のタイプも随分と変わったんだなぁ」

とか言ってきたかと思えば、続けざまに。

「去年の今頃は、きー」

 私がショコラティエの木村君に片思いしていたことを見抜いていた夏目さんは、どうやらそのことを隼の前でバラそうとしているらしい。

 ……もしくはそう装っているのだろう。

 隼は、ついいましがた夏目さんに喧嘩をふっかけた私の両肩を掴んで、なんとか止めようとしてくれていたけど、今は夏目さんの言動を訝しげな表情で見つめたままでいるようだ。

 必死なため、定かではないけど。

 必死な私は夏目さんに対して、そうはさせるかと大慌てで、

「あッ! ちょっとッ! 何余計なこと言おうとしてるんですかッ!」

完全に小学生の悪ガキと化している夏目さんの暴走を阻止しようと、大きな声を張り上げるという分かりやすすぎる行動に出てしまっていた。

 さっきまでケンカ腰で夏目さんに物申していた私の豹変ぶりに、隼が気づかないわけがない。

 案の定、全てを察したらしく。

 もうすっかり私の方に意識をシフトさせた隼が、私の両肩を掴んでいる手にぐっと力を込めて、僅かな心の機微も見逃さないというように、私の顔を食い入るように見つめつつ、

「去年の今頃、侑李さんが好きだった『きー』とは、誰のことですか?」

そう聞き返してきた隼の目は完全に据わってしまっている。

 きっと、隼の背後で珍しいモノを見つけたというような表情を数秒浮かべた後で、『気の済むまでどうぞ』という風に、私に片手を軽くあげて見せてから壁にもたれてスマホを弄り始めてしまった夏目さんのことなど、気づいてもいないのだろう。
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