【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
ただ黙って、写真を食い入りように見つめたままでいる隼。
私もドキドキと嫌な音を立て続けている自分の心臓の音だけしか聞こえない。
なんとも重苦しい静寂のなか。
意外にも、内容とは裏腹な、思いのほか穏やかな口調で、声を放った要さん。
「……その様子だと、覚えはあるようだな」
その声に弾かれるようにして、私と隼とがほぼ同時に正面の要さんへ目を向けると。
「怒ったりしないから話してみろ? どうせお前は、円城寺さやかに嵌められたんだろう?」
再び意外な言葉が返ってきて。しかも、事情を知っている風な口ぶりに、驚きすぎてどう反応を返せばいいか分からずにいると。
どうやら隼も私と同じだったようで。
……というよりは、ここに来るまでにも不穏な空気が漂ってたし。当然、非難されるものと思っていたのが、違ったから驚いていると言った方が正しいだろう。
「……ぼ、僕のこと、信じてくれるんですか?」
その証拠に、隼の口から出た言葉は、要さんの言葉がまだ信じられないといった様子だ。
それに対して、要さんは自嘲するような苦笑いを浮かべてから、語り始めた。
「当然だ。と言いたいところだが。俺は鳳凰堂の顧問弁護士にその写真を見せられたとき、正直、来るべき時が来たなと思っていた。けど、そのことで夏目と相談していて、それをたまたま美菜に聞かれてしまって。その時に言われたというか、叱られたと言ったほうが正しいな」
またまた意外な言葉が飛び出してきて。
「……み、美菜さんに……ですか!?」
驚きの声を上げた隼の隣で、私も驚きつつも事の成り行きを黙って見つめることしかできないでいた。
「あぁ。美菜に、隼は、『自分のことを欠陥品だから結婚なんてできるわけないのにって、言ってました。そんな人がそんないい加減なことなんてするわけない』そう言って終いには泣かれて。その時は仕方なく、円城寺さやかのことを調べたら。昔から男関係が派手で。出産時期から逆算した時期にも、何人もの男とそういう関係を持っていたことが分かった」
そうして最後まで要さんの言葉を聞き終えてようやく、どうやらやっぱり隼の子供ではないらしいことが分かり。
ホッとしすぎた私の頬をツーと生ぬるいものが伝う感触がして。数秒遅れで。
「侑李さんッ!?」
慌てふためく隼の声がしたと同時、隼にぎゅうっと抱きしめられていて。
「泣かせてしまって、すみません」
隼の言葉からして、どうやら私は泣いてしまっているようだ。