【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
暫くして、私の涙が落ち着いた頃。
「高梨さんには弟の隼のことで嫌な思いをさせてしまって、本当にすみませんでした」
要さんから謝罪があって、「いえ」そう答えた直後、言い出し難くそうに、「ですが」と、再び口を開いた要さん。
いよいよここからが本題らしい。
「残念ながらまだ解決はしておりません。あちらの顧問弁護士には、マスコミが嗅ぎつけるのも時間の問題だろうから、今度の創立記念パーティーで、隼との婚姻を発表したいので、早急に話し合いの場を設けてくれと言われていましてね」
要さんの言葉に、
「そうでしたか」
隼は予想していた通りだというような声を出していたけれど。
あまりにも一方的で身勝手な相手側からの話についていけなかった私は、思わず声を漏らしていた。
「そんなッ」
「高梨さんが怒るのも無理もない。あまりにも当然のことのように言うんで、危うく俺も騙されるところでしたが。いくら俺でも、あの場で、本人の確認もとらず、そんなものに応じたりはしていないので安心してください」
「そ、そうですか」
要さんのかけてくれた言葉にほっとした私に続いて。
「ありがとうございます」
隼が安堵の息をついて出した言葉には、
「礼をいうにはまだ早い。おそらく向こうは、こっちが条件を呑む気でいると思っているはずだ。そうしないと、どうせ明るみになるなら、子供の父親が隼だと自らマスコミに公表するとも言っていたからな」
要さんから穏やかじゃないモノが返されたものだから、あまりの衝撃に、私は絶句するよりなかった。
そこに隼の呆れ果てたというような声が響き渡って。
「……そんなことを言ってきてるんですか」
そこへまたまた間髪入れず、
「まぁ、向こうにしてみれば、売れない俳優や若いアーティストといった、先行きの不透明な相手よりも、隼のほうが体裁もいいだろうからなぁ。まぁ、もとより、隼を嵌めるためにそういう相手を利用したんだろうが。まぁ、そんなことはどうでもいい。そこで、提案なんだがーー」
要さんからある提案が持ちかけられたのだった。
けれどこのことが切っ掛けとなって新たな火種が降り掛かってこようとは誰が予想できただろうか。