【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
それなのに、隼から返ってきた言葉は、からかいの言葉とは百八十度違ったもので。
「本当は今日、婚約指輪を渡すだけにしようと思ってたんですけど。やっぱりやめにします」
さっきの嬉しそうなものとは打って変わって、やけに真剣なものだった。
それにも驚いたんだけど、それよりも、『やっぱりやめにします』という隼の言葉の方が気になって。
「……どういうこと?」
すっぽりと包み込まれている隼の腕の中で身動ぎして振り返ろうとした刹那。
それを制するように、ぎゅうっと腕に力を込めて抱き竦められると同時、隼の言葉が身体に切なく響いて伝わってきた。
「おそらく侑李の前だったので、僕のことを気遣ってくれた夏目さんや兄には悪いですが。やっぱり侑李には、ありのままの僕を知って、その上でどうしたいかを決めて欲しい」
その言葉に、おそらく、隼と、夏目さんや要さんとの間に感じたわだかまりのことを言ってるんだと察した私は、ゴクリと唾を飲み下し、大きくコクンと頷いて見せた。
ーーたとえ何があったとしても、隼のことを全部全部受け止める覚悟でいるという意思表示のために。
それが隼にちゃんと伝わっているのかは分からないけど、私が頷くのを見届けた隼が思い切るようにして、息を吐いてから、ゆっくりと語り始めた。
「あれは確か、去年の秋頃のことです。兄が美菜さんと正式に婚約したいと言い出して、すぐのことだったと思いますーー」