【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 ようやく私の想いが届いたのか、感極まった様子の隼の甘いマスクがますます歪んで、もうくしゃくしゃだ。

 それでもどうにか泣くのを堪らえようと踏ん張っている姿は、私の前ではちょっとでも男らしく有りたいという想いがそうさせるんだろう。

 そんなことしなくったって、どんな隼の姿であろうと、私にとっては愛おしい王子様なのに。

 でも私のためにそう有りたいと思ってくれている隼の気持ちは、素直に嬉しいし、どうしようもなく愛おしい。

 思えば、これまで隼にはいつもこうやって母性本能を擽られてばかりだったっけ。

 それはこれからだって、きっとそうなんだろうなぁ。

 この先の未来に想いを馳せ、引き寄せた隼のことを感慨深げに見つめていると、

「……侑李」

微かに声を震わせながら私の名前を呼んだ隼の瞳から、とうとうキラリと輝く雫が零れ落ちた。

 綺麗な涙だな、なんて場違いなことを思いつつ、

「ん?」

と、僅かに首を傾けて先を促し、隼の涙をゆっくりと指で拭おうとした刹那。

「……プロポーズで泣いた挙げ句に、侑李に慰められるなんて、情けない男だな」

 隼が眉尻を八の字に下げて、そう言って自嘲気味に零してくるなり、視線をふいっと私から逸してしまった。

 そしてそのまま私の左肩に顔を埋めると黙りこくってしまう隼に、私は思わずふっと笑みを零してしまうのだった。

 別に馬鹿にして笑ったんじゃない。なんだか無性に可愛く思えてしまったのだ。

 そこに、黙り込んでしまってた隼から、

「しかも、笑われたし」

小さな子供が言うような拗ねた言葉が返ってきて、そこで合点がいった。どうやら隼は悪い方に解釈してしまったらしい。

「隼からのプロポーズ、すっごく嬉しかった。それに、私の前で泣くってことは、それだけ隼が私に心を許してくれてるってことだもん。それがすっごく嬉しくてつい笑っちゃったの。私だって泣くのは隼の前でだけだもん」

 なんとかご機嫌斜めになってしまった隼に私のこの想いを伝えたくて、放った私の身体は、

「侑李には一生適う気がしないけど、侑李を想う気持ちだけは絶対誰にも負けないし、何があっても絶対守ってみせるから、一生僕の傍で見届けてほしい」

さっきまでの拗ねた口調はどこへやら、力強い口調で宣言してきた隼の逞しい腕によって抱きしめられていた。

 私もそれに応えるように、隼の背中に回した腕でしっかりとしがみついて、

「うん」

この幸せを噛み締めつつ、きっと今までで一番素直な返事を返せたんじゃないかと思う。

 しばらくして隼の涙が落ち着いた頃、私の左手の薬指には、隼から贈られた婚約指輪がキラキラと煌めきを放っていて。

 これから隼と一緒に歩んでゆく未来を照らしてくれているようだ。

 ここまでくるまでには、紆余曲折で本当に色々あった。
 正確にはまだ一つだけ残ってるけどーー雨降って地固まる、という言葉もあるようにーー私と隼の歩んでゆく未来もきっと指輪と同じように煌めいているに違いない。

 私は隼のあたたかな腕の中でそう確信していた。
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