【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
容赦ない隼に羞恥を煽られてしまい、どうにかなってしまいそうだったけれど、そんななか私はふと《《あること》》に気づいてしまうのだった。
それはこれまで、『侑李』呼びになるまで段階的に少しずつ少しずつ敬語口調が崩れてきた隼の口調のことだ。
私にプロポーズするために、何もかもを曝け出してくれた隼。
そのことが嬉しくて今の今まで気づかなかったけれど、いつしか隼の敬語口調が完全に崩れていることに気がつき、驚きを隠せない。
まいどまいど月並みのような気もするが、今の今まであんなに羞恥を煽られていたというのに、そんなものなどどこかに吹き飛んでしまっていた。
そんな私は、
「は、隼、崩れてるッ!」
今まさに足元の着物の合わせ目に手を這わせて、厭らしい水音を立てつつ私のことを巧みに攻め立てている隼に、大きな声を放っていた。
けれど唐突に、『崩れてる』なんて言われた隼にしてみれば、なんのことやらさっぱり見当もつかなかったのだろう。
さっきのように動きをピタリと止めてしまった隼は、キョトンと首を傾げてしまっている。
けれど私の様子が気にかかってしまったんだろう。
すぐに隼は私の肩をそうっと両手で掴んでくると、私の顔を優しく見下ろしつつ、やんわりと問うてきた。
「侑李、落ち着いて。どうかした?」
さっきまであんなに意地悪なことを言っていたのに、今は、まるで小さな子供にでも尋ねるようなとても穏やかな優しい声音に変わってしまっている。
……それに関しては、急に要領を得ない言葉を放った私のことを案じてのことだろう。
これはいつものことだ。
けれども口調に関して言えば、ここ最近では確かに、敬語の中に少し砕けた口調がチラホラと混ざるようになっていた。
でもこれまでのものとは全く違う。やっぱり完全に砕けた口調だった。
隼の様子からして、どうやら本人にはその自覚がないようだが。
これは私の想像だけど、おそらく、私に全部を曝け出したことで、隼の中にあった心の垣根がなくなったからじゃないだろうか。
それは隼が私に全てを許してくれている証拠に他ならない。
そう思ったら、嬉しくて、いてもたってもいられなくなってきた。思わず、
「何でもない。隼のことが好きで堪らないって言ってみたかっただけ」
全てを言葉に乗せそうになったけれど、なんとか堪えることに成功したのだった。
まぁ、うまく誤魔化せたとは、お世辞にも言えないお粗末な返しになってしまったけど。
とにかく、そうでもしないと、そのことを口にしてしまえば、『侑李』呼びでさえ時間を要した隼のことだ。
意識した途端、元の敬語口調に戻ってしまうかもしれない。
だから私はそのことには一切触れないことにしたのだった。