【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 そのせいで、私はシュンと気落ちしたような表情になってしまっていたようで。

「侑李、そんなに言い出しにくいことなの? それとも、僕じゃ頼りにならないってこと?」

 相変わらず今にも泣き出しそうな表情の隼は、今にも消え入りそうな頼りない声でそう言うと肩をガックリと落としてしまった。

 けれどすぐに気合でも入れるように、自分の頬を包帯で巻かれた両手でパチンと同時に叩いた隼がガバッと顔を上げてきて。

 今度は、強い眼差しで真っ直ぐに私のことを見つめ返してきた。そうして。

「さっき言ったよね? 侑李のことをめいっぱい幸せにするって。どんなことでも受け入れるから、僕のことを信じて頼って欲しい。世界中探し回っても侑李の病気を治してくれる医者を探し出してみせるから。だから、ちゃんと話して欲しい」

 覚悟を決めたように揺るぎない力強い声音でそう言ってくれた隼の言葉に。

 ーーこんなにも私のことを想ってくれてるんだ。

 不謹慎にも、感極まってしまった私は、口を開けばまた泣き出してしまいそうだ。

 泣いたらすぐに泣き止む自信なんかない。

 また隼に誤解させて余計な心配をかけてしまう。

 そう思うと、言葉を紡ぎ出すこともできないまま、愛おしい隼の胸に飛び込んでしまっていて。

「侑李、気づいてあげられなくて、ごめん」

 胸に飛び込んだ私のことをしっかりと抱き留めてくれた隼の声が、隼の体温と一緒に切なく伝わってくる。

 なんとか泣くのを堪えることができた私は、ようやっと隼の誤解を解くべく言葉を紡ぎ出すことができた。

「違うの、隼。全部誤解なの。ガンとかじゃなかったの。私のお腹の中には、隼の赤ちゃんが居るの」
「……」

 それなのに、待てど暮らせど隼は黙り込んだまんまでなんの反応も返してこない。

 静まり返った病室に設置された壁時計の秒針が規則的に時を刻むたびに。

 ーーもしかしたら、まだ自分のことを欠陥品だと思っていて、赤ちゃんを授かったことに戸惑っているのかもしれない。

 そんな考えが心の奥底から浮上してきてしまう。

 そんな考えを追い払うためにも、私が隼の反応を窺おうと、隼の胸から顔を上げようとした刹那。

 隼に強い力でぎゅうぎゅうと胸に掻き抱かれて、苦しさに堪えかねた私が、思わず漏らしてしまった。

「くっ、苦しい」

 という言葉に過剰反応を示した隼が私の身体を瞬時に自分の胸から引き剥がし。

「ゆ、侑李、ごめんっ! 大丈夫だったッ? どこか痛いところはないッ?」

 これまで見たこともないくらい酷く慌てた様子で、私の身体をヒョイと抱き上げ膝に横抱きにして、気遣わしげに身体のあちこちを確認し始めてしまった。

 私は隼の慌てように、唖然としてしまって、しばらくされるがままだったけれど。

 このままにしておいたら、いつまでも終わらない気がして。

「隼。落ち着いて、大丈夫だから。ねえ? はーやーと!」

 ストップをかけたものの、一向にやめる気配がなかったものだから、隼の頬を両手で引き寄せて名前を呼んで初めて我を取り戻したのだった。

 すると今度は、正面から隼の腕に閉じ込められてしまっていて。

「侑李も、お腹の赤ちゃんも、無事で……居てくれて、本当に……本当に、良かった」

 喜びを噛みしめるようにして声を震わせながら、訥々と言葉を紡ぎ出す隼の様子からして、さっき無反応だったのは、おそらく私と同じで、感極まってしまっていたのだろうことが伺えて。

 また感極まってしまった私も隼と同じように泣きながら隼のことをぎゅうっと抱きしめ返した。

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