【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

「それに、もう『橘』の従業員の皆さんにも伝えてあるらしいんだ。皆さん喜んでくれてるらしい。ダメかな?」
「……そんな風に言われたら、私が嫌って言えなくなるの分かってて。ズルいッ!」

 トドメに、あのキラースマイルでニッコリと無邪気に微笑まれてしまえば、もう降参するしかなかった。

 こんなツンとした素直じゃない言い方をしてしまうのは、少しでも気を抜いてしまうと、今にも大泣きしてしまいそうだからだ。

きっと私のこういうところも全部知り尽くしているだろう隼は、それを察してくれているのだろう。

 隼は、泣きそうになるのを必死に堪えている私に合わせて、いつものように甘えた口調でじゃれついてきた。

 そんな隼に私はいつもの如くツンとした口調で返すという安定の可愛げのなさだ。

 でもそれを隼だけには全部優しく包み込んで受け止めてもらえるという安心感がある。

 だからこそ、隼の隣はとても居心地が良くて、とっても安心できる。


「でも、僕のこういうところも好きになってくれてるんでしょ?」
「……バカッ」
「照れてる侑李、メチャクチャ可愛い。キスしてもいい?」
「勝手にすればいいじゃない」
「侑李の照れるところが見たくてつい。さっきも勝手なことばっかり言って、怒らせてばっかりで、ごめん」
「もう謝んなくていい。隼の気持ち分かってるから。ゆっくりできることから頑張ってみる」
「うん」
「そんなことより、キスしてくれるんじゃなかったの?」
「そんなふうに侑李にお強請りされたら、キスだけじゃ済まないかもしれないよ?」
「いいよ。だってこの子が生まれたら、もう隼のこと独り占めできなくなるから、今のうちにめいっぱい甘えさせてほしい」
「侑李、可愛すぎ。もう無理、我慢できない」
「あっ、ちょっと、まさかここでーーんんっ」


 隼とじゃれ合っているうち、いつしか甘い甘いとろけるような口づけを交わしていて。

 隼との甘い甘いとろけるような口づけに酔いしれながら、私はこれまでのことや、これから隼と共に歩んでゆく未来へと想いを馳せていた。

 あの一件以来、私は、急に仕事を辞めて部屋でひとりで居ると、社会から取り残されたような気がして、焦る一方で、もうずっとこのままなのかな、ってどこかで諦めてしまってた気がする。

 隼のために自分なりにできることを見つけて、それを頑張っていることで、少しずつ少しずつ募っていくそういうモノを誤魔化て見ないようにしていたんだと思う。

 だから『橘』の若女将の話は本当に嬉しかった。

 こんな私でも、必要としてくれてるんだってことが。

 でもそれと同じように、自分ができなかった時のことを考えると、怖くて怖くて堪らなかった。

 足が竦んで、どうしてもその一歩を踏み出すことを躊躇してしまっていた。

 それをこれまでと同じように、隼なりのちょっとあざといともとれるやり方で、今もこうして背中を押してくれて。

 私がちゃんと前に向かって歩んでいけるように、その道筋を照らして導いてくれる。


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 ーー私にとって、隼の存在がそうであるように、隼にとってもそういう存在であり続けたい。

 これまでのように、互いに想いあって、足りないところを補いあって、自分らしく輝いていられるように、互いに照らしあえるような。

 そうしたら、これから隼と一緒に歩んでいく未来は、永遠の輝きを放ち続けるこの結婚指輪のダイアモンドのように、これからもずっとずっと永遠に煌めいたものであるに違いないーー。


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