【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
こうして、僕は断腸の思いで侑李を部屋に残しパーティー会場へと向かったのだった。
主催者である円城寺社長への挨拶を済ませて、取引のある会社の方々への挨拶回りも一通り済ませた僕は、ある食品会社の若社長と談笑しながら抜け出すタイミングを見計らっていた。
「隼さん、最近婚約されたそうじゃないですか。おめでとうございます」
「ええ、ありがとうございます。そういう松岡さんこそ、最近奥様がお二人目のお子様を出産されたとか。さぞかし可愛いのでしょうねぇ?」
「いやぁ、もう、可愛すぎてメロメロですよ~」
そんなことを話しながら……。
近い将来、結婚して侑李との子供を授かったときのことを思い浮かべていた。
もしも侑李によく似た女の子だとしたら、可愛くて可愛くて、仕方ないんだろうなぁ。
きっと、その子が可愛すぎて、悪いことをしても叱ることのできない僕は、侑李に怒られてばかりいるんだろうなぁ。
待てよ。侑李によく似てるってことは、その子にまで怒られてたりして。
まぁ、その方が家庭円満でいいのかもしれないなぁ。
気づいたら、ふとそんなことを考えてしまっていて、自分のことながら僕は驚きを隠せなかった。
侑李に再会するまでの僕は、誰も好きになれなくて……。
欠陥品である僕には結婚なんてできないと思っていた。
ましてやこんな欠陥品である僕の子供なんて、とてもじゃないが考えられもしなかった。
もうけるべきじゃないとさえ思っていたのに。
そんな僕が、自分の子供のことをこんな風に思い描く日が来るとは思わなかった。
ーー人間、変われば変わるもんだな。
そんな風に感慨に耽っていたせいか、無性に侑李に会いたくなった。
そんな僕の想いが通じたのか、ジャケットの内ポケットのスマートフォンが振動し始めて。
ーー侑李かな?
僕は無意識に緩んでいく表情を引き締めつつ取り出したスマホの液晶画面を確認し、着信者が侑李ではなかったことに酷く落胆しながら席を外し、応対したのだった。
頭の片隅で、嫌な予感を感じながら。
着信相手は、警視庁の捜査一課の刑事であり、大学の後輩で、元セフレだった櫻井冴子さんで。
『隼、さっきホテルの通用口で結城の姿を見たって連絡が入ったんだけど、見逃したらしい』
嫌な予感が的中したことに、内心で舌打ちしつつも、部屋に残してきた侑李へメールするために櫻井さんとの通話を終わらせた。
それなのに、侑李にメールを送っても返信はなく、すぐに電話をかけてもなんの応答もない。
ーーもしかしたらまだ譲さんと話しているか、サイレントモードにでもしているのかも。
とは思いつつも、部屋から出ていないとも言い切れなくて、僕は近くに居たホテルのスタッフに声をかけていた。
僕が部屋に戻る間に入れ違ったりしないように部屋に内線をかけてもらうためだ。
こうしてる間にも、侑李にもしものことがあったらと考えただけで、もう居ても立っても居られなかった。
僕は、捕まえたスタッフに要件を伝えるなりその場から駆けだしていた。