【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
出入り口を出る寸前、僕の行く手を阻むように突如。
「隼、どこに行くの?」
背後から見知った女の声に呼び止められた。
このパーティー会場で僕のことを呼び捨てにするような人物なんてひとりしかいない。
誰かなんて、振り返らずとも分かる。
もう二度と関わり合いになりたくないと思っていた鳳凰堂デパートのご令嬢だ。
ファッションモデルという職業柄か、以前から交友関係が派手だった彼女。
そんな彼女の素行に長年悩まされていたらしい円城寺社長は、例の隠し子の件でも、娘よりも僕の言葉の方を信用してくれた。
兄さんが興信所で彼女のことを調べ上げていたように、円城寺社長もまた、同様に孫の父親のことも全て承知していたことには驚いたが……。
お陰で、今回の件もすぐに解決することができて、後は侑李との結婚に向けて準備を進めるだけだったのに……。
あのストーカー男の動向だって、あれ以来、ずっと櫻井さんに探ってもらっていたのに……。
ここに来る前、鳳凰堂デパートに例の件で立ち寄った際、櫻井さんからのこの着信で雲行きが怪しくなってきた。
『隼の予想通り、結城が東京に来てるらしい。もしかしたら隼と侑李さんの婚約のことを誰かに聞いたのかもしれない。念のため、ホテルの方に巡回頼んであるから』
あの件で、随分怖がっていた侑李にはとても伝えられはしなかったけれど。
ーーもし何があっても、侑李のことはこの命に代えても守ってみせる。侑李には指一本触れさせはしない。
櫻井さんからの着信で、不安そうにしながらも、気丈に振る舞おうとしている侑李のことを抱き寄せつつ、僕はそう心に誓ったんだ。
ーーこんな時に、我が儘なご令嬢なんかに構ってられるかッ!
「今後一切構わないでくださいと言ったはずです。急用ができましたので失礼させていただきます。では」
腸《はらわた》が煮えくり返ってはいたが、一応、人目もあるため彼女にしか聞こえないようにと配慮して立ち去ろうとした刹那。
「……あんな女、居なくなればいいのよ」
もう既に彼女に背中を向けて、気持ちは侑李の元に走っていた僕には、彼女がご自慢の綺麗な顔を醜く歪めて忌々しげに吐き捨てた言葉など届きはしなかった。