【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
一番気にかかっていることは、この状況が、僕のせいかもしれないということだ。
さっき僕の存在に気づいたときの、あのマネージャーの狼狽え方と、あの言葉。
おそらく、あのストーカー男に僕と侑李が婚約したと伝えたのは円城寺さやかに違いないだろう。
あの女ならやりかねない。
ーー否、そうとしか考えられない。
侑李のことを危険な目に遭わせてしまったのはこの僕なんだ。
侑李のことを命に代えても守るなんて、よく言えたものだ。
気づけたから良かったものの、もしかしたらこのストーカー男に侑李が刺されていたかもしれない。
そう思うと、言い尽くせないほどの怒りがこみ上げてくる。
このストーカー男にだけじゃない。自分自身に対してもだ。
ーーダメだ、ダメだ、ダメだ。こういうときこそ冷静になれ。今は侑李を守ることだけ考えろ。
この男に僕が刺されたところで、せいぜい傷害罪で捕まるのが関の山だ。
どう頑張ったところで、殺人未遂にまでは持ってなど行けないだろう。
なにより、僕が刺されてしまえば、侑李が自分を責めるに違いない。
……なら、いっそのこと刺されて死ねば、この男を侑李から遠ざけられるんじゃないのか?
侑李と再会して、侑李を好きになるまで、誰も好きになれずにいた。
僕はセフレだと割り切っていたけど、もしかしたら相手はそうじゃなかったかもしれない。
『鬼畜』なんて噂が立つくらいだ。僕のことを恨んでいるかもしれない。
その矛先が侑李に向けられることがないとも限らない。
……僕が居なければ、侑李をこんな目に遭わせずに済むんじゃないのか?
勘案していた僕の頭の中は、いつしかそんなモノで埋め尽くされていて。
視界の中で何かが動く気配がして、ハッとした僕がストーカー男に視線を向けた時には、受け身をとって構えていた手でナイフを受け止めていた。
状況を脳が把握した途端、掌には、焼け付くような感覚と、ドクドクと脈打つ感覚に襲われたが、そんなことになど構っているような余裕なんてなくて。
咄嗟に僕は、見るからに興奮状態に陥っているストーカー男の眼前で両膝をついて倒れ込んで見せた。
ストーカー男はナイフを持ってはいたが、刺すつもりなんてなかったのかもしれない。
侑李とこのストーカー男の間に割って入った僕の行動にカッとなってしまったんだろう。
けれど実際に刺してしまえば、そのことで我を取り戻し、興奮状態からも抜け出せるはずだ。
……そう頭の片隅で、冷静な自分が判断したんだろうが、実際にはあまりよく覚えてはいない。
ただ僕が倒れ込んだ瞬間、酷く取り乱した侑李の叫ぶような声が辺りを埋め尽くしていったことと。
ほぼ同時に、僕の背中に抱きついてきた侑李の感触だけは今もハッキリと覚えている。
けれどもそのまま気を失ってしまったらしい侑李の身体がくたりと崩れ込んでしまったことに気づいた僕は、もう冷静でなんて居られなかった。