【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
寝ぼけ眼の侑李は、僕の言葉を聞くなり、ハッと大きく目を見開き、物凄い勢いで飛びつくように起き上がってきた。
「ーー!? はっ、隼こそっ、大丈夫なのッ!?」
体調不良だったこともあり、とても心配だったけれど、思いの外元気な反応を見せる侑李の姿に、ホッとした僕の頬は無意識に緩んでいく。
「僕はナイフを手で撥ねのけるつもりが、ナイフを掴んじゃって。ちょっと切っちゃったけど、大したことないから安心して?」
お陰でごくごく自然に侑李に明るい口調で接することができた。
それでも僕がナイフを避けきれず掴んでしまったせいで、僕が刺されたと思い込んでしまってた侑李は、なかなか安心できずにいた。
「ほんとに?」
「うん。ほんとだよ。ほら、この通り。大丈夫だっていうのに包帯でグルグル巻かれちゃったけど。傷も浅いし、本当に大したことないから安心して?」
「……よかった」
侑李をなんとか安心させようと抱き留めた僕と話しているうち、心底安堵したように一言だけ呟いたきり、放心してしまったようで、しばらくの間僕が包み込んだ腕の中で、ただただ泣き続けていて。
しばらくして泣き疲れてからも、侑李は何も悪くなんてないのに、僕の腕の中でずっと謝ってばかりいた。
「……隼、ごめんね。私のせいでこんなことになって。私が被害届取り下げさえしてなかったら、こんなことにならなかったかもしれないのに。本当にごめんね」
そんないつになく弱り切ってしまっている侑李の姿は痛々しくて、胸が締め付けられる心地がして。
僕の心の中では、あのストーカー男への怒りと、ストーカー男を利用した円城寺さやかへの怒りとが渦巻いていた。
ーー侑李のことをこんなにも苦しめたんだ。この報いは絶対に受けてもらう。
そう改めて心に決めた僕だったが……。
その一方で、こんなにもどす黒い感情を抱いてしまっている自分のことが後ろめたくもある。
いつも真っ直ぐで、嘘なんてつけない侑李は、僕には、眩しいくらいに輝いて見える。
侑李が眩しすぎて、こんな僕が傍に居てはいけないんじゃないかって思ってしまうことがある。
特に、こういうことがあった時、僕の少々普通じゃない性癖を受け止めてくれた侑李に対して、どうしても罪悪感に苛まれてしまうのだ。
といっても、侑李とは身も心も通じ合っているせいか、セフレたちのように、毎回毎回、手錠で拘束したり、麻紐で雁字搦めにしたり、オモチャを使ったりせずとも、ノーマルなセックスで十二分に満たされる。
何もかも曝け出したあの夜以来、時折、侑李に『手首を拘束して欲しい』とお強請りされることはあるが、僕から強要したことは一度もない。
だから、そうしてしまった侑李に対して、余計にそう思ってしまうのかもしれない。
それから一時間ほど、あのストーカー男の被害届を取り下げた自分のことをずっと責めてばかりいた侑李を見守りながら、僕は入り乱れる感情の中に居た。
その頃には、侑李もずいぶんと落ち着きを取り戻すことができていて、ホテルで何が起こったのかも泣かずに聞けるまでになっていた。