【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
それからまたしばらくの間、僕は愛おしい侑李のことを腕に閉じ込めて、こうしてふたりで寄り添っていられるこの幸せを噛みしめていた。
無事で居てくれた愛おしい侑李のぬくもりをこの手で感じていたくて、僕は片時も離れることなく侑李の頭をずっと優しく撫でたり。
時折、気恥ずかしそうな素振りを見せる、可愛い侑李と微笑みあったり、侑李の髪や頭、額に瞼に頬にと、慈しむようにそうっと優しく触れるだけの甘やかなキスを幾つも幾つも降らせたりもしていた。
そこへ邪魔するようにして、出入り口の扉を誰かがノックする音が響き渡って。
入室を促した僕の声で、少しだけ扉が開いて、ヒョッコリと顔を覗かせたのは従兄である譲さんだった。
ーーチッ。譲さんかよ。
「ふたりの時間を邪魔しちゃって悪いんだけど、確認だけさせてくれるかな? 侑李ちゃん、”あのこと"なんだけど」
今回は譲さんにも色々世話になったけれど、そう気遣う素振りを見せるなら、もうちょっと気を利かせてほしかったんだけどなぁ。
心の中で、舌打ちし、自分勝手なことを言ってたら。
いつもは何でも遠慮のない譲さんらしからぬ言葉が聞こえてきて。
不思議そうな表情をしている侑李同様、首を傾げつつ譲さんの声に耳を傾けていたところ……。
「ま、まだですッ! 色々あって言いそびれてましたッ!」
数秒遅れで、『あのこと』という言葉に過剰反応を見せた侑李の動揺ぶりに、心中穏やかじゃなかった。
僕の中で、たちまち暗雲が立ちこめ始めて。
「そうだよね、あんなことがあったんだもんね。じゃあ取り敢えず、尿検査の結果、間違いなかったから。隼にちゃんと伝え終わったら呼んでね? じゃあ、隼も侑李ちゃんも、ごゆっくり~」
いつもの如く、脳天気な明るい譲さんの声が響く中、僕の頭の中では……。
ーーもしかして、命に関わるような病気だったんだろうか? まさか、ガンなんてことないよな。
というように、悪い考えばかりが蠢き始めていて。
それは譲さんが居なくなってからも続いて、言い出しにくいことなのか、黙り込んでしまった侑李の傍で、生きた心地なんてしなかった。
それでも、侑李のために男らしくありたい。
侑李に頼ってもらえるように、強くありたい。
ーー侑李のためなら、どんなことだって乗り越えてみせる。
なんとか自分を奮い立たせて、自分から侑李に声をかけたのに、侑李は酷く動揺しているようで、何も口にしようとはしない。
侑李のタイミングもあるだろうと待つことにしたものの、しばらく待っても、沈黙が続くだけ。
もうすっかり思い詰めてしまっている様子の侑李からは、何も返ってはこない。
「侑李、そんなに言い出しにくいことなの? それとも、僕じゃ頼りにならないってこと?」
それでも変わらず、黙ったままの侑李の反応に、僕の予想が当たっているのだと思い至った瞬間、またヘタレ思考に陥りそうになった。
ーークソッ! こんな時に怖じ気づいてどうする。
なんとか気合いを入れようと、包帯を巻かれた掌で自分の顔を叩いて、侑李に向かい合った。