【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
僕は神にでも祈るような心持ちで、希うように言葉を紡ぎ出した。
「ダメだよ。十五年前、『橘』で僕と初めて出逢った時に、大人になったら若女将として僕にお酌してくれるって、あの約束、まだ果たしてもらってないんだから」
「そんなの記憶にございませんッ!」
「そんな政治家みたいなこと言っても、ダ~メ。約束は守ってもらわないと」
「だって本当に覚えてないんだもん」
「なら、僕の夢を叶えて欲しい」
「夢ってどういうことよ?」
「あの時、侑李と出逢って、僕には、『YAMATO』のチョコを後継者のひとりとして守っていくって夢ができて、それはもう実現してる。もう一つの夢は、僕にその夢を与えてくれた女の子である侑李に若女将としてお酌してもらうことだよ。その夢を叶えて欲しい」
「……」
僕の必死な想いが神にでも通じたのか、ずっと頑なだった侑李の言葉が、ここでやっと途切れた。
侑李があと一歩、あと一歩を踏み出せるようにと、心から願いながら……。
「それに、もう『橘』の従業員の皆さんにも伝えてあるらしいんだ。皆さん喜んでくれてるらしい。ダメかな?」
最後に僕は、侑李にだけ見せるあのとびきりの笑顔で微笑んで見せた。
「……そんな風に言われたら、私が嫌って言えなくなるの分かってて。ズルいッ!」
すると侑李からは、安定のツンとした声が返ってきた。
僕の我儘をようやく聞き入れてくれる気になってくれたらしい。
ツンとした口調だったのは、きっと侑李のことだから、少しでも気を抜いてしまうと、今にも泣き出してしまいそうなんだろう。
だから僕は、そんな侑李に合わせるように、いつもの飾らないありのままの僕の素の言葉を返した。
少々子供じみた甘えた口調になってしまうのは、身も心も通じ合えた侑李に対してだけだから、大目に見てもらいたい。
「でも、僕のこういうところも好きになってくれてるんでしょ?」
「……バカッ」
「照れてる侑李、メチャクチャ可愛い。キスしてもいい?」
「勝手にすればいいじゃない」
「侑李の照れるところが見たくてつい。さっきも勝手なことばっかり言って、怒らせてばっかりで、ごめん」
「もう謝んなくていい。隼の気持ち分かってるから。ゆっくりできることから頑張ってみる」
「うん」
「そんなことより、キスしてくれるんじゃなかったの?」
「そんなふうに侑李にお強請りされたら、キスだけじゃ済まないかもしれないよ?」
「いいよ。だってこの子が生まれたら、もう隼のこと独り占めできなくなるから、今のうちにめいっぱい甘えさせてほしい」
「侑李、可愛すぎ。もう無理、我慢できない」
「あっ、ちょっと、まさかここでーーんんっ」
いつものように、愛おしくてどうしようもない侑李に甘える僕に、怒ったり呆れたりしながらも、全てをしっかりと受け入れてくれる侑李とじゃれ合いながら……。
僕はこの幸せをしみじみと噛みしめていた。