【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 私がテニスサークルに入ったのは中等部からテニス部に属していて、純粋にテニスがやりたかったからだ。

 それに警視庁のキャリアといえど、警察官は体力勝負のところがあるからだった。

 決して男を漁るためじゃなかったのだ。

 ……なのに、入ってみたら、一部を除き、どいつもこいつも男や女目当てのヤツばっかだった。

 一瞬、やめてやろうかとも考えたが、幼稚舎からの親友、三枝《さえぐさ》京香《きょうか》に引き止められ、居酒屋のお座敷で開かれている今日の新歓コンパにもいやいや参加している。

 京香は、高等部の頃から二歳年上の先輩と付き合っていて。その彼氏がこのサークルにいるために、やめるわけにはいかなかったのだ。

 そりゃ、こんなに男目当ての女がうじゃうじゃ居たら気が気じゃないだろうと思う。

 ちなみに京香の彼氏は一部の真面目にテニスに勤しんでいる部類に属してはいたが、モテている風だったから、余計だろう。

 そういう訳で、私は京香と一緒に、男や女目的のその他大勢とは必要以上に関わりたくなかったため、極力目立たない端っこの席を陣取っていた。

 しつこく言い寄ってくる男たちなんて完全シカトしていたため、もう少しでお開きという頃には、私に近寄ってくるバカも居なくなっていた。

 後少しで開放される。そう思っていたところ。

「キャーッ!? 王子様来た〜!」
「キャーッ!? 眩し〜!?」

 突然、その他多勢のバカ女たちの黄色い声が広いお座敷にどよめき始めた。

 何事かと思って振り返った先には、爽やかな淡いブルーのジャケットと黒い細身のボトムスがよく似合う長身の、確かに“王子様“という言葉に相応しい、中性的な美形の男の姿があって。

 その隣には、甘いマスクにふんわりとした無造作ヘアの王子様よりも少し長身で、キリッとした印象のツーブロックの王子様には少し劣るが、それでも充分に美形の男が肩を並べて立っていたのだった。

 これが、中等部の頃から噂には聞いていたけれど、恋愛事にはさして興味のなかった私が、神宮寺隼とその親友、蔵本涼の姿を初めて目の当たりにした瞬間だった。

 この時の私は、まさか自分が長い長い片思いをすることになろうとは、夢にも思わなかった。
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