【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 私が無意識に漏らしてしまった言葉が意外だったようで。鬼畜は、一瞬だけ驚いたように眼を瞠《みは》ってから口を開いた。

「まぁ、確かに。侑李さんのおっしゃる通り、僕の見かけに勝手な理想を抱いてすり寄ってくる女性は数多《あまた》居ますが。残念なことに、身体の相性云々を確かめる以前に、『理想と違った』、『騙された』と言って、拒絶されることもありましてね」

 ――だからって、一千万なんて大金はたいてまで、私なんかと『雇用契約』まで交わさなくても良かったんじゃないの?

 そんなもん私だってできるものなら、拒絶したいし、身体の相性だって、合うかどうかも分からない訳なんだし。

 鬼畜の言葉を聞いても、よく分からなくて、首を傾げることしかできないでいる私の耳に、再び鬼畜の声が聞こえてきて。

「まぁ、そういう訳で、これまで、僕の理想とぴったりと合致する女性とは出逢う機会がありませんでした。勿論、身体だけの割り切った関係の女性は何人も居ましたが。僕もいい歳ですから、いつまでもそういう関係を続けていく訳にもいきませんしねぇ……。兄も結婚しましたので、周りも口うるさくなってきましたし。

ですが、縁談の相手となると、良家のお嬢さんばかりで、僕の言いなりになるか、拒絶するかの二択でして。どちらも、僕の理想には程遠いという訳です」

 ――結婚を考えてるんだったら、なおさら、私じゃなくても良かったんじゃないの? 私はただ”恋人のフリ”をするだけなんだし。

 縁談の相手だって、きっと候補は沢山いるだろうし、そのうち、理想の相手とだって出逢えるかもしれないんだし。

 鬼畜の言葉を聞けば聞くほどに、余計に分からなくなってきて、私は困惑するばかりだ。
< 59 / 619 >

この作品をシェア

pagetop