【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
まぁ、おそらく、『YAMATO』の副社長という王子の立場上、刑事である私のことをいつか頼ることがあるとでも思って削除せずにいたのだろう。
そうは思いつつも、なんだか無性に懐かしく思えた。
それに加えて、ただのセフレでしかなかった自分のことを頼ってくれたことが少なからず嬉しくもあった。
けれども、そう思ったのも一瞬のことだ。
王子の話によれば、どうやら好きな女性ができたようで、その女性のために一肌脱いでほしいというのが要件だった。
一瞬でも嬉しいと思ってしまったものだから、少々暗い心持ちとなってしまったが、そんなことなどおくびにも出さずに、仕事モードの素っ気ない口調を心がけ通話は終了。
それからすぐに部下へ連絡を入れて指示を出しつつ、部屋着から仕事着であるパンツスーツに身を包み部屋を後にしようと思っているところに、優秀な部下からの折り返しの着信により、王子の彼女の居場所が判明。
即刻、王子へ知らせた私は、程なくして迎えに来てくれた部下の運転する覆面パトカーにて現場である銀座の老舗ホテルへと急行し、ストーカーにより連れ去られていたらしい彼女の救出に成功したのだった。
そしてそこで、連れ去られていた彼女を前に、こんなにも取り乱すことがあるのだろうか、と呆気にとられてしまうほどの、王子の豹変ぶりに、ただただ驚くばかり。
確かに、学生の頃から王子は日頃から身体を鍛えていたようだったので、腕に自信もあったのだろうが、刑事である私よりも先に前へと進み出てストーカー男のことを投げ飛ばしてしまってて。
ストーカー男がナイフを持っていなかったから良かったものの、一つ間違ったら大事になっていた可能性だってあった。
そんなことになっていたら、始末書なんかじゃ済まされなかったかも知れない。
急なことだったので彼女の身の安全を最優先にしたが、令状なんてとってないのだから当然だ。
そんなことも含めて、ついいつもの癖で、失態を犯してしまった部下を叱り飛ばすような厳しい叱責を放ちはしたが、心の中は不思議と穏やかだった。
何故なら、王子にフラれてからもう三ヶ月という時間の経過があったせいか、彼女に対する王子のあからさまな態度にショックというよりも、なんだか滑稽で、バカバカしくさえ思えてきてしまったのだ。
私の叱責に我を取り戻したらしい王子が血相を変えて、安堵して泣き出してしまったらしい彼女の元に脱兎の如く早さで駆け寄って、しっかりと抱きしめてあげている王子の姿を尻目に、私はストーカー男を部下と一緒に取り押さえつつも驚きを隠せないでいた。