【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
ーーこの人誰? この人本当にあの王子なの!? 全くの別人になっちゃってるんですけど……。
この様子からして、どうやら、こんな僕のことなど誰も好きになってはくれないでしょうから、なんて言って嘆いていた王子は、そういう女性に巡り逢うことができたばかりか、王子自らそうとう溺愛しちゃっているようだ。
まさか、こんなことになっているとは、思いもしなかったから、ビックリ仰天だ。
ーーあーあー、もうすっかりふたりだけの世界にどっぷりと浸っちゃってるし。
なんか、だだっ広い老舗ホテルの一室が心なしかピンク色に染まっているよう、そんな気さえしてきた。
後ろに控えている蔵本も同じように思っているのか、ヤレヤレと言ったら風情で私に同意を求めるような視線まで投げかけてくる。
ストーカー男は部下に任せて、つかつかと蔵本の傍に歩み寄り声をかけると、
「何あれ? 溺愛しちゃってるって感じですか? あれだと、彼女のことしか見えてないって感じ?」
蔵本は急にハッとしたような表情を覗かせた。
どうやら蔵本は私が王子のことを好きだったことをうっかり忘れてでもいたのか、私の声を聞いた途端それを思い出してしまったようで。
「……あっ、否、まぁ」
王子のことを好きだった私に対して、どう返していいか躊躇っている様子の蔵本。
その蔵本の姿に、蔵本が酷く酔っていたあの夜のことが蘇ってくる。
あの夜、自分こそ彼女にフラれて相当辛かっただろうと想うのに、否、だからこそ、黙っていられなかったのかも知れなかっただけかもしれないけれど。
でも、そんなふうにお節介を妬けるってこと自体、凄いことだと思うし、とっても優しい心根の持ち主に違いないとも思う。
あの時は、そんな風に思うような余裕もなかったけれど、少しずつ少しずつ時間が経つにつれて、あの時の優しさがじわじわと効いてきたのかどうかは分からないが。
この時私は、蔵本とじっくり話してみたい。蔵本のことをもっと知りたい。確かにそう思った。
「あぁ。私への気遣いならもう要らないんで。それより、蔵本先輩が酔ってたときに面倒見てあげた、あの時の貸し、返してもらってもいいですか?」
「……あっ、あぁ、そんなこともあったな」
「まさか、酔ってて忘れてたなんて言いませんよね?」
「ハッ!? んなことあるかよ」
「じゃあ、次の土曜、『Charm』で待ってますから」
「あぁ、了解」
王子からの突然の着信で完全に失恋することになってしまったが、こうして再び蔵本との再会を果たすことになって、この先蔵本と何かが始まるかどうかはまだまだ分からない。
けれどこれだけは言える。王子に長い長い片想いをしていたことには、きっと何かしらの意味があったに違いない。
おそらく、今夜のこの蔵本との再会にも、きっと何かしらの意味があるのだろう。だからそれをこれからじっくりと確かめてみようと思うーー。
~FIN~