【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
その日も、体育の授業を終えて更衣室で着替えを終えた私は、念入りにメイク直しを始めた女子たちのことを、『バカバカしい。そんなに気合い入れても誰も見ないってば』なんて思いつつ、体操着片手に更衣室を後にしたのだった。
が、教室にあと一歩というところで、携帯がないことに気づいたものの、次は運悪く音楽の授業で、視聴覚室へと移動しなければいけなかった。
授業に間に合うかどうか微妙なところだ。
「すず、これお願い。もし間に合わなかったら先生によろしく」
「オッケー、気をつけてね~」
迷った挙句、携帯をとりに行くことに決めた私は、すずに体操着を託して更衣室へと向かったのだった。
更衣室のロッカーでお目当ての携帯をすぐに見つけた私が、『これなら間に合いそうだ。ダッシュダッシュ』と、携帯を握りしめ更衣室から勢いよく飛び出した刹那。
ドンッと勢いよく何かにぶつかってしまった私は、弾かれるようにして後ろでに両手をついて尻もちの体勢でその場に倒れ込んだ。
慌ててた所為で前方をよく確認もしていなかった自分の方が悪かったクセに、しかもぶつかった相手を確認することなく、私は尻もちのあまりの痛さに思わず文句を言うという暴挙に出てしまったのだった。
「イッタイわねー、どこ見てんのよッ!」
「ごっ、ごめん。大丈夫だった? ケガはない?」
売り言葉に買い言葉で、ぶつかった相手にも当然罵られるとばかり思っていたのに。
意外にもぶつかった相手は申し訳なさげに謝ってくると、あまりの痛さにお尻の方にばかり視線と意識を集中させていた私の視界には、相手が差し伸べてきた自分よりも一回り程大きな手が映し出されていて。
ゆっくりと視線を上げるとそこには、いつの頃からか夢に出てくるようになったあの王子様の雰囲気によく似たニッコリとした笑顔を浮かべた男子の姿が映し出されていたのだった。