【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
一体どれくらいの時間、そうされていただろうか。
私の胸に顔を埋めていた鬼畜がようやく顔を上げ、髪を掴んでいた鬼畜の手からも解放されて、やっと解放されたとホッとしたのも束の間。
首をのけ反らせた状態で、容赦ない鬼畜に胸ばかりを攻められ、散々喘がされたお陰で、私は息も絶え絶えで、身動き一つとれない有り様で。
さっきのキスの時よりも酷く乱れた呼吸をなんとか落ち着けようと、胸を忙しなく上下させている。
それなのに、ぼやけた視界の隅で鬼畜が動くような気配がして、ハッとした私が身構えた刹那。
鬼畜は、着ていたワイシャツを煩わしそうに脱ぎ捨てると、身体の線が細いと思っていたのに、ジムにでも通っているのだろうか。
中世的な甘いマスクからは想像もつかなかった、ほどよくついたしなやかな筋肉で覆われた精悍な体躯が露になって。
油断しまいと身構えていた筈の私は、そのギャップに、不覚にも、ドキンと胸を高鳴らせてしまったほどだった。
そればかりか、どうやらそれを自分でも自覚しているらしい鬼畜に、
「どうしました? もしかして、なよっとした見かけの僕の身体が、意外にも筋肉質だったせいで、思わずときめいてしまいましたか? こういう見かけなので、幼少の頃は女の子によく間違われましてね。心配した祖父母の勧めで、その頃から兄と一緒に護身術や格闘技を習っていまして。兄は経営学を学ぶために時間がなくて十代の頃にやめていますが、僕は自由奔放な身ですので、今でも続けていましてね。気づけばこういう身体になったというワケです」
まんまと言い当てられてしまって。おまけに、別に聞きたくもないことまで聞かされて。
――あぁ、だから、あのヤクザの二人組を簡単に撃退できたんだ。と、得心したところで、ハッとした私は、まだおさまりのつかない荒い呼吸だということもすっかり忘れて、
「バッカじゃないのッ?! そんなワケないでしょーがッ! それに、そんなこといちいち説明しなくてもいいから。別に興味もないしッ!……ゲホッ、ゲホッ」
鼻息荒く、速攻で勢い任せに言い放ったまでは良かったのだけれど、言い切った直後、盛大に咳きこんでしまうという、なんとも情けない結果になってしまったのだった。