【紙コミックス①巻11/8発売②巻12/6発売✨】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 そしてそれを、意外にも、

「ゆっ、侑李さんっ? 大丈夫ですか? ほら、しっかりしてください」

さっきまでの意地の悪い口調とは違った、あの優しい甘やかな声音で、意外にもあたふたと慌てた様子で、心配そうに、そんな言葉をかけてきた鬼畜によって。

 ついさっき、不覚にもときめいてしまった、ほどよくついたしなやかな筋肉に覆われた素肌の逞しい胸に抱き寄せられてしまい。

 それだけでも、ようやく落ち着きかけていた筈の胸の鼓動が途端に騒ぎ出してしまって、ドキドキと高鳴ってしまうというのに……。

 鬼畜にしっかりと素肌の逞しい胸に抱き寄せられ、おまけに背中まで優しく撫でられてしまっているお陰で。

 ぴったりと密着した素肌を通して、鬼畜の暖かなぬくもりと一緒に、トクントクンと心地良い鼓動までが伝わってくる。

 さっきまであんなに意地悪な言葉と冷たい冷ややかな眼差しで、私のことを見下ろして、容赦なく攻め立てていた人物と、同一人物とは思えないほどの豹変ぶりを見せる鬼畜の優しさに、私の鼓動は落ち着くどころか、高鳴る一方だ。

 そんななか、当の鬼畜はといえば、

「もっとしっかりした方だと思っていましたが、侑李さんは意外とおっちょこちょいで可愛らしい方なんですねぇ?」

相も変わらず優しい甘やかな声音で、とても愉快そうにそんなことをいってきて、私のことをからかってくる。

「おっちょこちょいで悪かったわねっ! もういいから離しなさいよっ……ゲホッゲホッ」

「侑李さん、大丈夫ですか? そうやってすぐにしゃべるからですよ。ほら、少し黙っててください」

「わっ、分かってるわよッ……ゲホッ」

「ほら、また。侑李さん、少しは僕の言うことを聞いてください」

「……は、はい」

 そんな鬼畜と、あれこれ言い合いながら、一体どっちが本当の鬼畜なのか、私の頭は混乱しきりで。

 そしてなにより、互いの素肌が触れあっているその感触が、心地良い、なんて思ってしまった自分自身に対しても、私は戸惑うばかりだ。 

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