恋の涙、愛の傷
高科にすっぽり包まれたまま、
カナは静かに口を開いた

言おうか、どうしようか、悩んだけど、
やっぱり、ちゃんと、言いたかったから


「この前、休みだったから、買い物にでたの。
そこでね、

見ちゃった…
奥さんといるところ」


高科が凍りついたのが分かった


カナを抱きしめる力が強くなった

「ごめん・・・」

抱きしめあったまま、しばらく、沈黙


「いいなぁ、赤ちゃん。まだ私は産めないけど」
沈黙を消そうと、思わず本音が出てしまう。
「ちゃんと、最低二人は生まないとだめだよ。
国民の義務だから」

言ったあと、高科はしまった!
という顔をした。


カナの頬には涙が伝っていた。

もう一度、カナを抱きしめ、そっとキスをし、カナの髪に顔をうずめる。



「ごめん、今日、俺意地悪だね。
 本当ごめん」




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