恋の涙、愛の傷
カナ、22歳、秋
何かと理由をつけて、定期的に行われる、職場の飲み会もやっと終わった。
カナは一人で行きつけのバーでも寄って帰ろうと思い、
他のメンバーに別れを告げて、一人で店を出て
飲み屋街のビルの中にある、バーの黒いドアを開けた。
「いらっしゃーい!あ、カナじゃん!」
明るい性格のマスターの笑顔が視界に飛び込んでくる。
「こんばんは〜空いてる?」
「いつもの席空いてるよ」
マスターの指差す先には、いつもカナが座るカウンターの一番窓側の席。
「ありがと。」
カナはいつものようにそのイスに手を伸ばし、座る。
ビールを頼むと、隣の席に座っていたサラリーマンと目が合った。
一瞬で、視線が奪われた。