聞こえるまで何度だって言うよ
フェミニンなワンピースを着た葉桜さんは、華やかな大学生活を送っていると誰もが見てわかる人だ。毎日友達に囲まれて、楽しく喋って、おしゃれや趣味、アルバイトを楽しんでいる。僕とは真逆の世界の人。でも、どうしてこんなところにいるんだろう。

「……本に興味なさそうなのに」

僕の呟きが聞こえたのか、「家頭くんって意外と毒舌なの?」と葉桜さんは驚く。僕は慌てて「ごめん」と謝った。

「いいよ。だって大学内では読書しないし。でも本当は読書がすっごく好きなんだよね!家頭くんがいつも面白そうな本読んでるなって思ってて……」

おしゃれに忙しそうな葉桜さんが読書好きだったなんて驚いた。一体、どんな小説家のどんなジャンルを読むんだろう。僕の中に興味が湧いてくる。

「……葉桜さんは、どんなジャンルを読むの?」

人とこうして話すなんて、とても久しぶりだ。声が少し震えていた。でも、葉桜さんは「基本的にはどんなジャンルでも読むかな」と笑う。……僕と一緒だ。
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