【完】スキャンダル・ヒロイン

特別扱いをされるのには慣れていたけれど、時たま普通の子供を羨ましく思う日も増えてきた。

小学生になったらもうどこにいっても声を掛けられる日が続いて、通っていた学校の同い年の子供たちからは…良くは思われていなかった。

普通に遊んだりもしたかったけれど、俺と遊んでくれる奴はあまりいなかったし、どこに行ってもカメラに追いかけられて、俺の立ち振る舞いひとつで周りに迷惑をかけると知った。

そんな俺を心配してか、両親は中学校入学を機に芸能活動を休止させた。


けれど休止したかと言って俺を取り巻く環境はさほど変わらなかった。
どこに行ってもついて回る’芸能人、姫岡真央’テレビに映らなくなったとしても、俺が芸能人であるという世間の目からは逃げれなかった。

芸能界を休止した後も「あの大人気子役の現在は?!」と芸能記者に追い掛け回されたし、普通の学生生活は送れなかった。

普通の学校に通って彼女が出来た事もあったけれど、真央くんと一緒じゃ普通の恋愛も出来ない、と振られた事もある。

そんな事もあり、俺は段々と人間をこじらせていった。 自分で言うのもなんだけど、過去の俺は素直で優しい良い子だったと思う。周りが俺にそんな姫岡真央を望んだから、応えていたって節はあるけれどさ。


結局高校を卒業したのと同時に芸能界に復帰した。
特に将来したい事もなかったし、夢なんつーもんもなかった。あのスポットライトの下に戻りたいとは一度も思わなかったけれど、戻って再び演技をした時に気づいたのだ。

俺は演技という仕事が好きで俳優という職業に誇りを持っている、と。

しかし復帰して6年。人気若手俳優と揶揄されて、子役上がりという事もありこぞって話題にはされた。
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