【完】スキャンダル・ヒロイン
けれど彼女はその容姿以上に、心の綺麗な女性だった。それはこの数か月一緒に過ごしてきた中で、十分理解したつもり。
少しだけ気の強そうな眼差しを持っているけれど、実は繊細で…。どこか誤解されがちだけど、周りの事ばかり考えてすごく優しい。そんな彼女と過ごす時間は捻くれた自分にとって癒しにいつの間にかなっていた。
空に大輪の花火が上がる――
本来であるのならばこんな人混みは勘弁なのだけどな。
それにしても作り笑いは疲れる。凝りに固まった首をぽきぽきならしていると、目の前にいるちんちくりんのおかっぱ頭の女が、ボーっとしながら潤んだ瞳でこちらを見つめてきた。
対称的に譲とかいうでくのぼうのひょろひょろした男は、敵意を持った目で俺を睨んでいる。
馬鹿らしい。
静綺が好きだったたっくんとかいう男もチビで全然かっこよくもなかったし、その男どもが夢中になっているしおりとか言う女もその辺に居そうな普通の女。
特にこの男ふたりは目がどうかしてんじゃねぇのか?!静綺の方が全然綺麗じゃねぇか。
「あのー……」
「ん?」
それでも営業スマイル。一応あいつの彼氏の振りをしているのだから。
話の一部始終を聞いていたが、思わずブちぎれそうになった。揃いも揃って静綺を悪者にしようとして、何が友達だ。笑わせるな。
静綺も静綺だ。俺に見せるように言いたい事はハッキリと言うべきだ。いつもは気が強い癖して、肝心な所で弱気になって、今にも大きな瞳から涙が零れ落ちそうだったじゃないか。
そんな彼女を見て、放ってはおけなかった。