【完】スキャンダル・ヒロイン
「静綺の彼氏さんって…」
「ああ、まあね」
「うわぁ、譲。静綺すごいね。姫岡真央さんが彼氏さんなんだって!」
譲という男の服の袖を引っ張って、目を輝かせながら女は言った。
おいおいお前、たっくんという静綺の’元’想い人と付き合ってるんじゃないのかよ。そっちの男にも気がある素振りを見せて、大体この男まだこのしおりっつー女が好きだろう。
だからって静綺を傷つけて良い理由には全くなりやしないけど。
「私ー…姫岡さんの大ファンなんですッ。映画もドラマも全部見ています」
うわー…よくいるわぁーこういう女。
きっと昴がここに居たとしても昴に同じ事を言うのだろう。
心に思っている事は決して顔には出さずに、にこりと微笑みを落とした。
「ありがとう。嬉しいよ」
「テレビで見るよりも実物の方がすっごくかっこいいですッ」
「本当?君みたいに可愛い子にそう言って貰えると嬉しいよ」
俺の言葉に、嬉しそうに目を細めた。…俺はミーハーな女が世界で1番苦手なんだ。
「ところで、静綺とは色々あったようだけど。
ごめんね?君にまで迷惑を掛けちゃったようで…」
「いえ、あれは私が悪いっていうか……。静綺が怒るのも無理はないかなって…。
だから譲にも協力をしてもらって仲直りしたいなぁーって思ってて…。
ほんと、私が悪いんです。静綺を傷つけちゃったから、あんな態度取られて当然かなって…」
「いや!しおりは悪くねーよ!俺は静綺の態度の方がどうかと思うし。
つーか芸能人だかなんかと付き合ってるか知らねぇけど、今日はそれを見せびらかしたかったんじゃねぇの?
あんな派手な似合いもしない真っ赤な浴衣着ちゃってさ。静綺がそういう女だとは思いもしなかったよ。
少し位有名な人と付き合ってるから調子にのってんじゃねぇの?」